ビデオ・ストリーミング処理 – 環境への配慮

インテル® Media Server Studioビッグデータメディア

この記事は、インテル® デベロッパー・ゾーンに公開されている「Video Streaming Processing – Going Green」(https://software.intel.com/en-us/blogs/2016/03/15/video-streaming-going-green) の日本語参考訳です。


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はじめに

年間のグローバル IP トラフィックが、今年はついにゼタバイトを超え、2019 年までには 2 ゼタバイトに達する見込みです。1 過去 5 年間ですでに 5 倍に増加したトラフィックは、今後 5 年間でさらに 3 倍近くも増加すると予測されています。2019 年までには、1 人あたり平均 3 台のネットワーク接続デバイスを所有することになるでしょう。

クラウドでメディア処理/ストリーミングを行う場合、このような膨大な量のコンテンツに対応するには、ハードウェア性能を最大限に引き出すための綿密な計画と新しいアプローチが必要です。ライブ・ビデオ・ストリーミング、ライブ/オンデマンド・ビデオ・トランスコード・ソリューション、仮想セットトップボックスなど、どのような分野であっても、あらゆるビデオ要求 (誰でも、どこでも、どのデバイスでも) に対応できるようにビジネスを移行する必要があります。 

課題

ブロードキャスティング業者およびコンテンツ集計業者は、増え続けるデジタルメディアへの対応に追われています。この課題について正しく理解するため、YouTube* の統計 (http://www.statisticbrain.com/youtube-statistics/) を見てみましょう。

YouTube™ の統計 データ
YouTube™ 利用者数 1,300,000,000
毎分 YouTube™ にアップロードされる動画時間 300
毎日 YouTube™ で視聴される動画数 4,950,000,000
毎月 YouTube™ で視聴される動画時間 3,250,000,000

これだけのデータを格納するだけでなく、トランスコードし、ストリームする必要があるのです。Google™ の報告 (http://www.pcmag.com/article2/0,2817,2392654,00.asp) によると、YouTube™ の動画 1 分間のストリーミングには 0.00002kWh かかり、0.1g の二酸化炭素が排出されます。これらに 180,000,000,000 分を掛けた値が YouTube™ の 1 カ月間の消費電力と二酸化炭素排出量になります。 

このような状況の中、データセンター、特にビデオ・トランスコーダーとストリーミング・メディア・プロバイダーは、CPU のみで処理する従来のサーバーを追加することで、競争力を保つことはできません。物理的なスペースの問題に加えて、電力消費やその他の運営費を考慮すると、現在のフットプリントでスケーリングが可能なソリューションが望まれます。 

この記事では、デジタルメディア業界の 3 社が、膨大な量のビデオデータへの対応に取り組み、データセンターのフットプリントを大幅に軽減しつつ、スケーラブルで高速なソリューションを実現した事例を紹介します。

企業 業種
Vantrix* (英語) ライブ/オンデマンド・ビデオ・トランスコード向けのソフトウェア・ソリューション
iStreamPlanet*
http://www.istreamplanet.com/
SaaS によるプレミアム HD コンテンツの任意のデバイスへのライブ・ビデオ・ストリーミング
ActiveVideo* (英語) CloudTV*、Pay-TV、仮想セットトップボックスの開発

Vantrix* は、データセンターのフットプリントを軽減し、処理能力を高めるソリューションを模索していました。トランスコードを含む計算負荷の高い関数を処理できるように、より高速で、柔軟性があり、大容量のメモリーを備えたものが理想的であると考えていました。

IStreamPlanet* は、従来のブレードサーバーで独自の Aventus* プライベート・クラウドを運営していましたが、トランスコードのパフォーマンスとクラウドの効率を向上するため、新しいインフラストラクチャーを見つける必要性に迫られていました。 

ActiveVideo* は、CPU のみの処理ではパフォーマンスをスケーリングできないことに気付きました。また、高度なユーザー・インターフェイスとオンラインコンテンツを提供するため、クラウドの重要性が増してきていることを認識しました。 

ソリューション

企業 コンポーネント
Vantrix*2
  • HP Moonshot* 1500 シャーシ + HP ProLiant* m710 Servers 
  • インテル® Media Studio Server
iStreamPlanet*3
  • HP Moonshot* 1500 シャーシ + 5 x HP ProLiant* m710 Servers 
  • インテル® Media Studio Server
ActiveVideo*4
  • インテル® Iris™ Pro グラフィックス搭載 Kontron* Symkloud サーバー
  • インテル® Media Studio Server

HP ProLiant* m710 Server は、高品質なビデオ・トランスコードを高速化するため、インテル® Iris™ Pro グラフィックス P5200 内蔵の インテル® Xeon® プロセッサー E3-1284L V3 を搭載しています。インテル® Iris™ Pro グラフィックスは、インテル® Media Studio Server により利用可能なハードウェア・アクセラレーションを提供するインテル® クイック・シンク・ビデオに対応しています。 

Kontron* Symkloud は、インテル® Iris™ Pro グラフィックス内蔵のインテル® Core™ i7 プロセッサーの性能を独自の方法で引き出し、複数のクラスター・プラットフォームにわたってビデオ・トランスコードのワークロードと UI セッションをスケーリングする高密度の COTS 2RU サイズのプラットフォームです。

インテル® Iris™ Pro グラフィックスは、2013 年に Haswell (開発コード名) ベースの一部のプロセッサー・モデルに内蔵され、リリースされた統合グラフィックス・プロセッサーで、インテル® HD グラフィックスのハイパフォーマンス・バージョンに当たります。シリーズで初めて DRAM を内蔵しています。

インテル® クイック・シンク・ビデオは、ハードウェアによるビデオ・エンコード/デコード・テクノロジーです。一部のインテル® プロセッサーに内蔵されています。 “クイック・シンク” は、入力 (例えば DVD や Blu-ray* からの) ビデオを出力 (スマートフォンなど) 向けの適切なフォーマットに素早くトランスコード (“シンク”) することから名付けられました。 インテル® クイック・シンク・ビデオは、2011 年 1 月 9 日に Sandy Bridge (開発コード名) ベースのプロセッサーに内蔵され、リリースされました。

ここで紹介した 3 社はすべて、インテル® クイック・シンク・ビデオ対応のインテル® Iris™ Pro グラフィックス P5200 を内蔵したインテル® プロセッサーと、 デジタルメディア処理/ストリーミング向けのハードウェア・アクセラレーションと最適化の利用を支援するさまざまなツールがバンドルされたインテル® Media Studio Server5 を採用しました。

結果

3 社とも素晴らしい結果を得ることができました。

企業 結果
Vantrix*

フットプリントと設備投資: 電力消費とスペースを抑えつつ 1 RU あたりのストリーム数を増やすことができました。 

インテル® クイック・シンク・ビデオによるパフォーマンスの向上:

  • 1080i ストリームの同時トランスコードがシステムあたり 5 本から 14 本に増加 
  • 各ラックのストリーム処理能力が 52 本から 147 本に増加

この最適化により、大幅なアプリケーション・パフォーマンスの向上、コストの合理化、イノベーションの促進を実現できました。

iStreamPlanet*
  • これまで複数の大型プロセッサーで行っていた複数チャネルのビットレート変換を 1 台の ProLiant* m710 で処理できるようになりました。
  • 9 x HP Moonshot* 1500 は、典型的な 42U ラックよりも小さいため、フットプリントが減りました。
  • ブレードサーバーと比べて消費電力を大幅に抑えることができました。
  • 1 チャネルあたりのコストを下げつつ、HD チャネル数を増やすことに成功しました。 
ActiveVideo*
  • 15-20 ラックからたった 1 ラックで TV ガイドを 100 万人の利用者に提供できるようになりました。
  • リアルタイム・ビデオ・トランスコード・セッションが 10 倍になりました。
  • 次の理由から、セッションあたりの価格パフォーマンスが最大 40% 向上しました。
    • クラウドベースの pay-TV ガイドを 100 万人の利用者に提供するのに、従来は 15-20 ラック必要でしたが、1 つのデータセンター・ラックで対応できるようになったため、CloudTV* のセッション密度が 4 倍以上向上しました。
    • プレミアム・オンライン・ビデオ・コンテンツを任意の pay-TV 利用者に適用できるようになったため、リアルタイム・ビデオ・トランスコード・セッションが 10 倍以上になりました。
  • 設備投資額を利用者あたり $40-60 から $1 に大幅に削減できました。

まとめ

フットプリントとコストを抑えつつ、IP ビデオの急増に対応するため、企業は革新的な取り組みを行っています。ここで紹介した 3 社はすべて、インテル® Iris™ Pro グラフィックス搭載の新しいスケーラブルなサーバーのパフォーマンスを最大限に引き出すため、インテル® Media Studio Server のツールセットを利用しました。

Vantrix* は、業界平均の RU あたり 5.54 ストリーム7 を超える大幅なパフォーマンスの向上を達成し、RU あたり 147 本の HD ストリームを提供できるようになりました。Vantrix* のソリューションは、インテル® クイック・シンク・ビデオ対応のインテル® グラフィックス・プロセッサーによりアクセラレートされた H.264 コーデックをベースにしています。

iStreamPlanet* は、HP Moonshot* 1500 を使用することで、スペースを減らし、スケーリングを達成して、増加する顧客の要求に素早く対応できるようになりました。数分でチャネルやコンテンツの追加が可能になりました。

pay-TV 事業者にとって、クラウドでのスケーラビリティーは最大の関心事と言えます。ActiveVideo* のソリューションは、インテル® Iris™ Pro グラフィックス搭載の Kontron* Symkloud サーバーにより、設備投資費と運営費を軽減する一方、仮想セットトップボックス上でユーザー・エクスペリエンスの向上を実現しました。

関連情報

  1. Cisco Visual Networking Index*: Forecast and Methodology, 2014-2019 (英語)
  2. Vantrix* Media Platform on HP Moonshot* with HP ProLiant* m710p Server Cartridges (http://h20195.www2.hp.com/V2/getpdf.aspx/4AA5-5352ENW.pdf (英語))
  3. Case Study: iStreamPlanet* transforms live video streaming with HP Moonshot*
    http://www.istreamplanet.com/blog-updates/case-study-istreamplanet-transforms-live-video-streaming-with-hp-moonshot/
  4. ActiveVideo*, Intel technology breakthroughs reduce Virtual Set-Top Box data center capex to $1/sub
    http://www.activevideo.com/activevideo-intel-technology-breakthroughs-reduce-virtual-set-top-box-data-center-capex-to-1-sub-act
  5. インテル® Media Server Studio 2016
  6. Get Fast Media Performance through Hardware Acceleration
    https://software.intel.com/en-us/blogs/2016/02/28/faster-media-apps-by-using-hw-acceleration
  7. Global Media and Entertainment Video Transcoding Market (英語)

著者紹介

  • Gael Hofemeier は、ビジネス・クライアントおよびコンシューマー・アプリケーション担当のシニア・ソフトウェア・エンジニア兼テクニカル・コンテンツ・ライターです。

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