テレパソロジーのためのネットワークの最適化と AI 推論の管理

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この記事は、Intel AI Blog で公開されている「Network Optimization and AI Inferencing Management for Telepathology」の日本語参考訳です。


病気の診断や治療のために行われる生体検査や血液検査などの「パソロジーサービス」は、現代の医療の基盤となっています。しかし、患者の診断の鍵となる組織や液体サンプルを分析できる専門家の数は激減しています。病理医は、サンプルの分析、サンプルの搬送、他の医療従事者との協議、データの整合性の維持といったワークフローを行っていますが、症例数が増加し続ける中で、効率良くスケーラブルなプロセスが求められています。

デジタルパソロジーを活用し、テレパソロジーのコンセプトをワークフローに適用することで、生産性を向上させ、バイオハザードのリスクを最小限に抑え、患者の症例数を効率良く管理できます。しかし、このデジタル・ワークフローは、病院の IT チームに、特に AI モデルの管理や分散ネットワークでのデータ転送などの新たな課題をもたらします。この記事では、AI モデルの管理や分散ネットワークでのデータ転送に注目して、テレパソロジーのユースケースを検証します。

現在のパソロジー・ワークフロー
患者の組織や体液を分析するため、病理医はサンプルを染色してスライドグラス上の細胞構造 (病理サンプル) を識別します。そして、サンプルを顕微鏡で観察し、細胞レベルで疾患の兆候が見られるかどうかを判断します。その後、病理医はサンプルを別の病理医に物理的に送付して顕微鏡を使った再検査を依頼し、サンプルの解釈に関するセカンドオピニオンを求めます。

この方法にはいくつかの課題があります。

  • 病理医により分析に必要な時間が異なるため、分析のスループットは変動します。
  • サンプルの準備、梱包、搬送に必要な時間に含まれる未知の要因によりプロセスは変動します。
  • 搬送中にスライドが破損した場合、搬送プロセス自体がバイオハザードのリスクを高めることになるため、リスク・エクスポージャーは高いです。

AI モデル管理とテレパソロジー
人工知能 (AI) モデルを使用して、デジタル化された病理標本の画像から細胞レベルで疾患の兆候を認識します。ホール・スライド・イメージング (WSI) 機器は、顕微鏡検査のステップを自動化し、顕微鏡画像をデジタル化して、AI の推論アルゴリズムで解釈します。推論は、推論結果に基づいて、最も緊急性の高いサンプルを優先的にキューに入れて病理医に確認させることで、サンプルのトリアージを支援します。これにより、病理医は患者の症例を効率良く評価できます。

しかし、この新しいコンピューター支援型のワークフローは、新たな課題ももたらします。病院の IT システムは、解析に使用するさまざまな AI モデルを管理および配備して、ピアツーピア・レビューを行う場合と同様に、組織のインフラストラクチャー内外の複雑なネットワークを介したデータ転送機能を実現しなければなりません。

テレパソロジーとは、デジタル化された画像やデータを拠点間で共有するためにテクノロジーを利用することです。テレパソロジーのユースケースを用いて、コンピューティング・アーキテクチャーによりネットワーク・ルーティングの自動化を簡素化し、病院システム内の AI モデルの展開を最適化する方法を示します。この最終目標を達成するため、インテルのソフトウェア・エンジニアは、テレパソロジーのためのネットワークの最適化と AI 推論の管理を行うリファレンス実装 (英語) を開発しました。ウェブベースのユーザー・インターフェイスを備えたソフトウェア・アーキテクチャーとエッジ・ハードウェアで構成されるソリューションにより、エッジ・コントローラーからさまざまなエッジノードを管理することが可能です。これにより、IT インフラストラクチャーで必要とされるデータ・ルーティングやトラフィック・シェーピングの「ハンズオン」管理を軽減できます。

このユースケースを詳しく検証する前に、インテルが開発した主要な機能をサポートするソフトウェア・コンポーネントについて説明します。

OpenNESS ツールキット
OpenNESS は、高度に最適化されたハイパフォーマンスのエッジ・プラットフォームで、アプリケーションやネットワーク機能の搭載と管理を可能にする、オープンソースのエッジ・コンピューティング・ソフトウェア・ツールキットです。マルチアクセス・ネットワーク・マイクロサービスは、さまざまな種類のネットワーク構成で情報を共有する際のネットワークの複雑さを軽減します。このマイクロサービス (ソフトウェア・プロトコル) は、病理医の間で物理的なサンプルを送る際の非効率性とリスクに対応しています。病理医のラボがデジタルパソロジーを利用している場合、画像やデータを物理的に送る代わりに、ネットワークを介して協力している病理医に送信できます。OpenNESS ツールキットは無料で、インテルベースのプラットフォーム向けの追加機能や最適化が搭載されています。

OpenVINO モデルサーバー (OVMS)
OVMS (英語) は、インテルが開発したモデルサーバー推論プラットフォームで、OpenVINO™ ツールキットの推論エンジン・ライブラリーを使用して、新しいアルゴリズムや AI 実験を簡単に展開できます。TensorFlow* Serving と同様の機能を持つ OVMS は、トレーニング・システムとデプロイメント・システム間の容易な統合、スケーラビリティー、ツールキットがサポートするフレームワークでトレーニングされたあらゆるモデルの標準的なクライアント・インターフェイスをサポートします。さらに、クライアント・コードを変更することなく新しいモデルを展開可能で、Caffe*、TensorFlow*、MXNet、ONNX* などの一般的なフォーマットのモデルをサービスしたり、インテルの CPU、VPU、AI アクセラレーターをしており、ネットワーク内で展開して拡張するためベアメタルホスト、Docker* コンテナー、Kubernetes のいずれかで利用可能です。

以下は、ユースケースの説明です。

  • A 病院では、患者の組織や液体のサンプルを入手します。サンプルはスライドガラス上に配置され、ホール・スライド・イメージ (WSI) 機器を使用してデジタル化されます。画像と関連データは WSI からオンプレミスのサーバーに送られ、A 病院の AI モデルの 1 つを使用して推論されます。OpenVINO™ モデルサーバー (OVMA) は推論用サーバー上の AI モデルを管理します。
  • その結果は、病院情報システム (HIS) や企業向け医療記録 (EHR) ソフトウェアに送られ、患者情報を追跡します。このケースでは、A 病院の病理医は、推論結果を確認し、別の病院拠点の 1 人または複数の病理医にセカンドオピニオンを依頼できます。
  • A 病院は、データを異なるネットワーク・アーキテクチャーを持つ B 病院に転送します。OpenNESS は、マルチアクセス・ネットワーク・マイクロサービスを介してデータ転送を自動的に管理します。B 病院では、内部ネットワークに OpenNESS と OVMS の別のインスタンスが存在するため、異なるネットワーク構成でもデータ転送が簡素化されます。
  • B 病院の病理医は、結果を確認し、画像や推論の分析結果について意見を述べることができます。その後、その情報は A 病院の HIS や EHR に送られ、メインの病理医が最終確認を行います。


図 A. アーキテクチャー図

ここでは、クライアントは推論を行う医用画像を提供するマシンです。クライアントはエッジノード上の OVMS に RPC 呼び出しを送り、必要な推論モデルまたは OpenVINO™ でサポートされるモデルを取得します。推論分析は、基礎となるハードウェアを使用して実行され、その結果は HIS や EHR のオンプレミス・サーバーに送られるか、CSP によってサービスされます。A 病院が B 病院にデータを転送する場合、OpenNESS はマルチアクセス・ネットワーク・マイクロサービスを介してデータ転送を自動的に管理します。B 病院では、内部ネットワークに OpenNESS と OVMS の別のインスタンスが存在するため、異なるネットワーク構成でもデータ転送が簡素化されます。

このユースケースのソフトウェア・コンポーネント、推奨ハードウェア、アーキテクチャーの詳細は、テレパソロジーのためのネットワークの最適化と AI 推論の管理を行うリファレンス実装 (英語) のドキュメント (英語) を参照してください。ドキュメントには、概要、システム要件、リファレンス実装の推奨構成をダウンロードするための導入ガイドが記載されています。インテル® Edge Software Hub (英語) には、アプリケーションの調査、テスト、作成に必要なすべてのツールと情報が用意されています。また、OpenVINO™ モデルサーバー (英語) と OpenNESS (英語) は、今回検証したテレパソロジーのユースケース以外にも、組織が直面する可能性のあるその他の IT 課題をサポートしています。

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