エンタープライズ AI 開発者ガイド

AIエンタープライズ

この記事は、インテルのウェブサイトで公開されている「A Developer’s Guide to Adapting to Enterprise AI」の日本語参考訳です。原文は更新される可能性があります。原文と翻訳文の内容が異なる場合は原文を優先してください。


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AI スキルを向上しましょう!

AI ソリューションを企業全体に広めることで、開発者の生産性を向上し、市場で優位に立つことができます。この記事の後半のリソース・ライブラリーも参照してください。

多くの開発者は、学術界、ティンカリング、起業の初期段階から経験を積んでいます。専門職に従事したり、製品を概念実証から運用環境に移行する際には、エンタープライズ規模でソリューションをデプロイするという、大きな規模と課題に直面します。エンタープライズ規模での AI の導入は、自転車から高性能のスポーツカーにアップグレードするようなものです。刺激的で、パワフルで、慎重な取り扱いが求められます。このガイドでは、開発者として大規模な組織に AI を効果良く導入する方法について詳しく説明します。

エンタープライズ AI を理解する

エンタープライズ AI とは?

エンタープライズ AI とは、さまざまなビジネスの機能に AI を大規模に適用して、パフォーマンスの向上、成長の促進、競争上の優位性の創出を目指すものです。小規模な、あるいは実験的な AI プロジェクトとは異なり、エンタープライズ AI には堅牢なインフラストラクチャー、戦略的な調整、部門間の協力が必要です。エンタープライズ規模での AI の導入は、次のような大きなメリットをもたらします。

  • 予測分析による意思決定の改善
  • パーソナライズされたサービスによる顧客体験の向上
  • 運用効率の向上とコスト削減
  • 製品とサービスにおけるイノベーション

基盤の構築

ビジネスニーズと機会の評価

AI 導入の最初のステップは、AI が最も効果を発揮できるビジネスニーズと機会を特定することです。学術研究や愛好家向けのプロジェクトとは異なり、エンタープライズ環境にソリューションを導入するには、明確な目標の定義と、提案されたソリューションの投資対効果の適切な予測が不可欠です。研究室を除いて、企業におけるソリューションは、直接または間接的に企業の収益に結び付く必要があります。これを判断するには、次のような分析を行います。

  • AI により独自の付加価値が生み出される、改善が必要なビジネス領域を特定します。
  • ソリューションの収益やコスト削減への影響を判断するため、ビジネスインパクトを分析します。
  • ビジネスリーダーは、ソリューションがタイムリーに市場に影響を与えるか判断するため、アイデアの創出から最終的な運用環境へのデリバリーまでの目標を明確に定義する必要があります。
  • ソリューションの資金として、財務、製品、研究開発部門から予算を確保します。

部門横断型の AI チームを構築して連携する

AI の導入を成功させるには、データ・サイエンティスト、エンジニア、ドメイン・エキスパート、ビジネスリーダーを含む、多様なチームが必要です。

エンジニアリングを開始する前に、企業の AI チームにいくつかの重要な質問を行い、実現の可能性と適切な連携を判断する必要があります。

  • 「市場に投入する価値があるか?」 – これは、新しい機能、ツール、アプリケーションを評価する際に、製品リーダーとビジネスリーダーに最初に尋ねる重要な質問です。この質問は、真にエンドユーザーからの需要があるかどうかを判断して、市場のニーズを満たさない取り組みに対するリソースの浪費を回避するのに役立ちます。『The Lean Startup (リーン・スタートアップ)』の著者である Eric Ries (エリック・リース) 氏は、「What if we found ourselves building something that nobody wanted? In that case, what did it matter if we did it on time and on budget? (もし誰も欲しがらないものを作ったとしたらどうだろう? たとえ期限内に予算内で作ったとしても、一体何になるだろうか?)」という有名な言葉を残しています。
  • 「どうやって作るか?」 – これは、エンジニアとして、アーキテクチャー、テクノロジー・スタック、実装戦略を定義することにより貢献するチャンスです。また、プロジェクトの実現可能性を評価し、ビジネスの目標に沿った現実的なスケジュールと予算を決定する上でも重要なステップです。
  • 「ドメイン固有の要件を考慮しているか?」 –ソリューションが、対象の業界、分野、ジャンル、文化の固有の側面と一致していることを、ドメイン・エキスパートに相談して確認することが不可欠です。ドメインの専門知識は、汎用性にとらわれない価値を付加し、ソリューションがエンドユーザーにとって意味があり関連するものであることを保証し、真にインパクトの強い取り組みを実現します。

適切な AI テクノロジーを選択する

ビジネスの目標認識がチーム内で一致したら、次の重要なステップは、導入する適切な AI テクノロジーを選択することです。AI ツールとフレームワークの選択肢は多いため、適切なものを選択することが AI イニシアチブの成功を左右します。選択に役立つ考慮事項をいくつか紹介します。

  • フレームワークとライブラリー: チームの専門知識および解決しようとしている問題に最適なフレームワークを選択してください。ディープラーニング・タスクでは、PyTorch (英語) と TensorFlow (英語) が業界で広く利用されています。従来のマシンラーニングでは、scikit-learn (英語) が一般的です。構造化データタスクには、XGBoost (英語) や LightGBM などのライブラリーが最適です。
  • クラウドとオンプレミス・ソリューション: 多くの企業は、スケーラビリティーとデプロイの容易さから、クラウドベースの AI ソリューションを好んで利用しています。AWS SageMaker、Google AI Platform、Azure Machine Learning などのプラットフォームは、AI モデルの構築、トレーニング、デプロイ向けのエンドツーエンドのサービスを提供しています。しかし、規制の厳しい業界では、データ・プライバシーの懸念からオンプレミス・ソリューションを選択する場合があります。
  • モデル解釈可能性ツール: AI が意思決定において重要になるにつれ、モデルがどのように予測を行っているかを理解することが不可欠です。SHAP、LIME、Explainable AI (XAI) ライブラリーなどのツールは、AI システムの透明性と、エンジニアとビジネスリーダーの両者による解釈可能性を確保するのに役立ちます。
  • ここでは触れていませんが、データ・インフラストラクチャーも、AI テクノロジーをサポートするために考慮すべき重要な点です。

AI を運用する

モデルを運用環境に導入するのは始まりに過ぎません。AI を運用するには、モデルが予想どおりに動作し続けるように、継続的な監視と管理の反復が必要です。AI を効率良く運用する手法をいくつか紹介します。

  • 監視とアラート: ほかのソフトウェア・システムと同様に、AI モデルも運用環境で問題が発生する可能性があります。これらの問題には、入力データの分布が時間の経過とともに変化し、モデルのパフォーマンス低下につながるデータドリフトなどが含まれます。Evidently AI や Azure の Application Insights などの監視ツールは、これらの問題を早期に検出して、エンジニアに警告します。
  • モデルの再トレーニング: 時間の経過とともに、変化するデータやビジネスの状況に対応するため、AI モデルの再トレーニングが必要になります。このプロセスを MLOps パイプラインで自動化することにより、手作業を行うことなく、モデルの正確さと関連性を維持できます。
  • 説明可能性と監査: 金融や医療などの規制の厳しい業界では、AI モデルが監査の対象となることがあります。モデルを簡単に説明できること、データの使用状況、トレーニングのプロセス、意思決定の出力の内容を追跡調査できる明確な記録があることを確認してください。
  • ここでは触れていませんが、IT および DevOps との連携も、AI の運用において考慮すべき重要な点です。

セキュリティーとコンプライアンス

AI システムをエンタープライズ規模でデプロイする場合、セキュリティーとコンプライアンスは極めて重要です。AI システムは機密データを扱うことが多いため、サイバー攻撃の格好の標的となります。AI イニシアチブのセキュリティーとコンプライアンスを確保する方法を次に示します。

  • データ・プライバシー: GDPR、HIPAA、CCPA などの規制の順守は不可欠です。データの収集、格納、使用方法の透明性を確保し、必要に応じてデータの匿名化や仮名化のメカニズムを実装します。
  • モデルのセキュリティー: AI モデルに対する敵対的攻撃は、結果の信頼性を損なう可能性があります。敵対的学習や差分プライバシーなどの手法は、このような攻撃からモデルを保護するのに役立ちます。
  • ロールベース アクセス制御 (RBAC): RBAC を実装して、機密データとモデルの出力へのアクセスを制限します。承認された担当者のみ AI モデルやデータセットを表示または変更できるようになり、セキュリティーがさらに強化されます。

エンタープライズ規模での AI の導入は複雑ですが、やりがいのある作業です。戦略的なアプローチを採用して、適切なテクノロジーを活用することにより、企業は大きな価値を引き出して、イノベーションを推進できます。AI が進化し続ける中、トレンドに先んじて行動し、倫理的で責任ある AI の実践に注力することが、長期的な成功の鍵となります。

リソース・ライブラリー

将来の AI 開発者や現役の AI 開発者向けに、検索拡張生成 (RAG) の実装、マイクロサービスの活用と構築の機会の特定、RAG 手法を利用したエンタープライズ・レベルのアプリケーション開発におけるデータ活用の強化に重点を置いて、エキスパートが厳選したコンテンツを見てみましょう。ここでは、開発者が RAG を活用してスケーラブルで影響力の強い AI ソリューションを構築するための主要な手法とツールを紹介します。

ここで学べること:

  • 検索拡張生成 (RAG) の実装
  • マイクロサービスの活用と構築の機会の特定
  • RAG を利用してエンタープライズ・アプリケーションを構築し、データを活用する機会の認識と強化

開始方法

ステップ 1: LangChain を使用して RAG パイプラインを実行する方法のビデオを視聴する (英語)

インテルのテクニカル・エバンジェリスト、Guy Tamir が、LangChain と OpenVINO™ による高速化を活用して、インテルのハードウェア上で RAG (検索拡張生成) を実行する簡単な説明と Jupyter Notebook を紹介しています。

ステップ 2: ChatQnA アプリケーション・サービスを構築する (英語)

画像の出典: GitHub (英語)

この ChatQnA ユースケースでは、インテル® Gaudi® 2 AI アクセラレーターまたはインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー上で、LangChain、Redis VectorDB、テキスト生成推論を使用して RAG を実行します。インテル® Gaudi® 2 アクセラレーターは、特に LLM 向けのディープラーニング・モデルのトレーニングと推論をサポートしています。

ステップ 3: OPEA Community Days でエキスパートやほかのコミュニティー・メンバーと交流する (英語)

OPEA の使命は、検証済みのエンタープライズ・グレードの生成 AI リファレンス実装を提供し、開発とデプロイを簡素化することにより、市場投入までの時間を短縮し、ビジネス価値の実現を促進することです。2025年秋に開催予定のバーチャルイベントにぜひご参加ください!

ステップ 4: 検索拡張生成 (RAG) の理解に関する技術記事を読む (英語)

画像の出典: Medium (英語)

この記事では、Ezequiel Lanza が、大規模な組織で AI ソリューションを拡張する開発者向けの簡潔なロードマップを紹介しています。ビジネスニーズを特定し、適切なチームを構築し、適切な AI テクノロジーを選択し、モデルを効率良く運用する方法を学んで、真のビジネスインパクトを生み出しましょう。

関連情報


製品および性能に関する情報

1 性能は、使用状況、構成、その他の要因によって異なります。詳細については、http://www.intel.com/PerformanceIndex/ (英語) を参照してください。

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